オールドレンズ用にNikon Zfを選んだ理由:Sony α7シリーズと迷った末の結論

オールドレンズ用にNikon Zfを選んだ理由:Sony α7シリーズと迷った末の結論

オールドレンズ機を選ぶという課題

オールドレンズをデジタルで楽しむなら、ミラーレス一眼が最適だ。

フランジバックが短いから、アダプターを介してあらゆるマウントのレンズが装着できる。EVFがあるから、マニュアルフォーカスでもピントが合わせやすい。ボディ内手ブレ補正があれば、手ブレ補正のないオールドレンズでも安心だ。

2023年秋、私はオールドレンズ用のボディを探していた。候補は二つ。

Nikon ZfSony α7C IIだ。

どちらもフルサイズセンサー、強力なIBIS、高品質なEVFを備えている。スペック上は、どちらを選んでも問題ない。

だが私は、Zfを選んだ。

ダイヤルという「体験」

Zfを初めて手に取ったとき、私は確信した。これだ、と。

軍艦部に並ぶダイヤル。シャッタースピード、ISO感度、露出補正。すべてが物理ダイヤルで操作できる。電源を入れる前から、設定が見える。

Sony α7シリーズは違う。モードダイヤルはあるが、シャッタースピードやISOは液晶画面かEVFで確認する。電源を入れないと、何も分からない。

オールドレンズを使うとき、私たちは何をしているか。

絞りリングを回し、距離リングを回し、光を読んで露出を決める。すべてが「手」で行う作業だ。その体験に、メニュー画面は似合わない。

Zfのダイヤルは、オールドレンズの操作体系と一貫している。レンズで絞りを決め、ボディでシャッタースピードとISOを決める。フィルム時代と同じワークフローが、デジタルで再現できる。

Nikon Zfで撮影した猫のポートレート
Nikon Zfで撮影。物理ダイヤルの操作感がオールドレンズと調和する Photo by Henry Söderlund / CC BY 2.0

Fマウントという資産

Nikonを選ぶもう一つの理由がある。Fマウントレンズだ。

FTZ IIアダプターを使えば、60年以上の歴史を持つFマウントレンズがZfで使える。Ai Nikkor、Ai-S、AFレンズまで。中古市場には数千円から数万円の良品が溢れている。

私はオールドレンズ沼に落ちる前、NikonのFマウントレンズをいくつか持っていた。それらがそのまま使えるのは、大きなアドバンテージだった。

Sonyにも、もちろんアダプターはある。だが、Fマウントレンズを使うなら、やはりNikonボディの方が自然だ。メニューの表記、レンズ情報の登録、すべてがNikonレンズを前提に設計されている。

Mマウントレンズとの相性

実は、ZfがSonyより優れている決定的な理由がある。センサーカバーガラスの厚さだ。

Mマウントの広角レンズは、センサーに対して斜めに光が入射する設計が多い。これはレンジファインダーのフランジバックが短いことに起因する。

Sonyのセンサーは、カバーガラスが比較的厚いと言われている。斜めに入射した光がカバーガラスで屈折し、周辺部で色かぶり(マゼンタシフト)が発生しやすい。特に28mm以下の広角レンズで顕著だ。

Zfはこの点で有利だ。Nikonはセンサーカバーガラスを薄くする努力をしており、Mマウントレンズとの相性が良いと評判だ。私のColor-Skopar 28mm F2.8でも、周辺の色かぶりはほとんど気にならない。

もちろん、Sonyでも後処理で補正できる。Lightroomにはレンズプロファイルがあり、色かぶりを軽減できる。だが、撮って出しで使いたい私には、Zfの相性の良さは大きなメリットだった。

これは「Mマウントレンズを使うなら」という条件付きの話だ。Fマウントレンズしか使わないなら、この差は関係ない。だが私は、最初からMマウントレンズも視野に入れていた。

IBISの実力

オールドレンズに手ブレ補正はない。だからボディ内手ブレ補正(IBIS)が重要になる。

Zfは約8段分のIBIS効果を謳っている。Sony α7C IIも7段分。数字上は大差ない。

実際に使ってみると、どちらも十分な効果がある。50mmレンズで1/8秒、28mmで1/4秒程度なら、手持ちで撮れる。

ただ、Zfの方が「安定している」印象がある。Sonyは瞬間的な補正は強いが、ゆっくりとした動きには弱い気がする。これは主観的な感想だが、私の撮影スタイルには合っていた。

EVFの見え方

EVFの品質も重要だ。オールドレンズはマニュアルフォーカスだから、ピントの山が見えないと困る。

Zfは369万ドットの有機EL。Sony α7C IIは236万ドット。数字上はZfが上だが、実際の見え味は好みの問題だ。

私がZfを気に入った理由は、フォーカスピーキングの見え方だ。ピントが合った部分が色付きで表示される機能。Zfのフォーカスピーキングは、私の目には自然に見えた。

また、Zfは0.8倍の倍率がある。Sony α7C IIは0.7倍。ファインダーを覗いたとき、Zfの方が大きく見える。これは長時間の撮影で地味に効いてくる。

デザインという哲学

正直に言おう。私がZfを選んだ最大の理由は、デザインだ。

Zfは、Nikon FMやFEといったフィルム一眼レフをオマージュしている。ペンタ部の形状、軍艦部のダイヤル配置、全体のプロポーション。すべてがフィルム時代を思わせる。

オールドレンズは、フィルム時代のレンズだ。そのレンズを、フィルム時代のデザインを持つボディに装着する。これは、単なる「見た目の問題」ではない。

撮影体験の一貫性なのだ。

Sony α7シリーズは、現代的なデザインだ。効率的で、合理的で、プロフェッショナル。だが、そのデザインにVoigtländerのレンズを付けると、どこか違和感がある。

もちろん、これは私の主観だ。Sony α7にオールドレンズを付けて、素晴らしい写真を撮っている人はたくさんいる。だが私は、「体験」の一貫性を重視した。

Nikon Zfで撮影したキャンドルのテーブル
Zfの8段IBISのおかげで、暗いシーンでも手持ち撮影が可能 Photo by Henry Söderlund / CC BY 2.0

Sonyを選ぶ理由もある

公平を期すため、Sonyの優位点も挙げておこう。

AF性能。Sonyのリアルタイム瞳AFは業界最高峰だ。オールドレンズでは使えないが、AF対応レンズも使うなら、Sonyの方が圧倒的に便利。

軽さ。α7C IIはフルサイズとしては非常にコンパクト。旅行や日常スナップで持ち歩くなら、軽さは正義だ。

動画性能。4K 60pの内部記録、S-Log対応など、動画撮影ではSonyに分がある。

レンズラインナップ。Eマウントのサードパーティレンズは充実している。Sigmaの単焦点をAFで使いたいなら、Sony一択だ。

私はこれらの要素より、「オールドレンズを使う体験」を優先した。だが、優先順位は人それぞれだ。

価格の現実

2023年秋の時点で、Zfは約30万円、α7C IIは約26万円だった。

4万円の差をどう見るか。私は、ダイヤル操作とデザインに4万円の価値があると判断した。

現在は両機とも価格が変動しているが、Zfの方がやや高い傾向にある。この差額を「体験」への投資と見るか、「無駄」と見るかは、価値観の問題だ。

レトロデザインと最新技術の融合。物理ダイヤルによる直感的な操作が魅力。

¥299,200 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

コンパクトなフルサイズ。最新のAF性能と動画機能を搭載。

¥303,830 (記事作成時の価格です)

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結論:体験を買う

オールドレンズ用のボディを選ぶとき、何を重視するか。

スペックだけを見れば、ZfとSony α7C IIに大きな差はない。どちらもフルサイズ、強力なIBIS、高品質なEVFを備えている。どちらを選んでも、オールドレンズは楽しめる。

だが私は、スペック以外の要素を重視した。

物理ダイヤルの操作感。Fマウント資産との互換性。フィルム時代を思わせるデザイン。そして、オールドレンズを使う「体験」としての一貫性。

Zfは、オールドレンズのためのカメラではない。だが、オールドレンズとの相性が良いカメラだ。

その相性の良さは、スペックシートには現れない。実際に手に取って、ダイヤルを回して、ファインダーを覗いて、初めて分かる。

私はZfを選んで、後悔していない。

どちらを選ぶべきか

Zfがおすすめな人

  • 物理ダイヤルで操作したい人。電源を入れる前から設定が見える安心感。
  • Fマウントレンズを持っている人。FTZ IIで資産が活かせる。
  • 撮影体験の一貫性を重視する人。フィルム時代のワークフローをデジタルで再現。

Sony α7C IIがおすすめな人

  • AFレンズも使いたい人。Sonyの瞳AFは業界最高峰。
  • 軽さを最優先する人。α7C IIはフルサイズ最軽量クラス。
  • 動画も撮りたい人。動画性能ではSonyに分がある。

便利じゃない理由には、だいたい意味がある。私にとって、Zfの物理ダイヤルは「便利」ではないかもしれない。だが、オールドレンズを使う「意味」を深める道具だと思っている。

今回紹介したカメラ

レトロデザインと最新技術の融合。物理ダイヤルによる直感的な操作が魅力。

¥299,200 (記事作成時の価格です)

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松本 幹也

不便さを愛し、収差を「絵筆」として使う哲学者。コシナレンズとLeicaを愛するSIerインフラエンジニア。

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