Nikon ZfからLeica Mへ:EVFを捨ててレンジファインダーに移行した理由

Nikon ZfからLeica Mへ:EVFを捨ててレンジファインダーに移行した理由

Zfという最高のスタート

2023年10月、私はNikon Zfを手に入れた。

発売直後だった。物理ダイヤルだらけの外観に一目惚れした。シャッタースピード、ISO感度、露出補正。すべてが手元で完結する。電源を入れる前から設定が見える。

Zfは、オールドレンズを使うための最高のEVF機だと思っていた。

VM-Zアダプターを介してVoigtländerのMマウントレンズを装着する。EVFにはフォーカスピーキングが表示され、ピントの山が一目で分かる。8段分のIBISがあるから、手ブレ補正のないオールドレンズでも安心だ。

半年間、私はZfでオールドレンズの世界を堪能した。

だが、心のどこかで「何か足りない」と感じていた。

レンジファインダーへの憧れ

Mマウントのレンズを使っているうちに、気づいたことがある。

これらのレンズは、レンジファインダー用に設計されている。Leicaのボディで使うことを前提に、光学設計されている。

アダプターを介してミラーレスで使うのは、いわば「代用」だ。本来の使い方ではない。

もちろん、Zfでも素晴らしい写真が撮れる。EVFのおかげでピント合わせは正確だし、IBISのおかげでブレも少ない。機能的には、Leicaより優れている部分も多い。

だが、「体験」として何かが違う気がした。

設計者が意図した使い方をしていない。その違和感が、次第に大きくなっていった。

Leica M Typ 240との出会い

2024年、私はLeica M Typ 240を手に入れた。

Typ 240は、2012年発売のモデルだ。センサーは2400万画素のCMOS。現在の基準では「枯れた」スペックだ。

だが、私には「これでいい」と思えた。

ライカは、スペックで語るカメラではない。撮影体験で語るカメラだ。

初めてファインダーを覗いたとき、私は驚いた。

明るい。広い。そして、像が「そこにある」。

EVFとは根本的に違う世界がそこにあった。

EVFとレンジファインダーの本質的な違い

EVFは、センサーが捉えた像を電子的に表示する。

光がレンズを通り、センサーに当たり、信号に変換され、液晶に表示される。私たちが見ているのは「再構成された像」だ。

レンジファインダーは違う。

ファインダー窓から入った光が、そのまま目に届く。センサーを介さない。電子的な処理もない。純粋な光学系だ。

この違いは、言葉で説明するのが難しい。

EVFで見る像は「映像」だ。レンジファインダーで見る像は「現実」だ。

同じ被写体を見ているはずなのに、感覚が全く違う。レンジファインダーを覗くと、被写体が「そこにいる」と感じる。EVFでは、被写体を「見ている」と感じる。

フレーム外が見えるということ

レンジファインダーの最大の特徴は、フレーム外が見えることだ。

EVFでは、画面に映っている範囲しか見えない。フレームの外で何が起きているかは、ファインダーから目を離さないと分からない。

レンジファインダーは違う。

ファインダーの中にブライトフレームが表示されるが、その外側も見える。フレームに入ってくる人物、通り過ぎる車、変化する光。すべてが視界に入っている。

ストリートスナップでは、この「予測」が決定的に重要だ。

フレーム外から人物が入ってくるタイミングを見計らって、シャッターを切る。EVFでは、この「待ち」の撮影が難しい。

私は、この感覚を知ってから、ストリートスナップの撮り方が変わった。

シャッター音という対話

Leica Mの布幕シャッター音は独特だ。

「シュッ」という控えめな音。静かで、品がある。

一眼レフの「カシャッ」でも、ミラーレスの電子音でもない。レンジファインダー特有の音だ。

このシャッター音は、被写体との「対話」の一部だと思っている。

ストリートで人を撮るとき、シャッター音は相手に届く。派手な音は威圧的だ。Leicaの控えめな音は、撮影を「共有」している感覚がある。

Zfのシャッター音も悪くない。だが、Leicaのそれとは質が違う。

Zfを手放さない理由

では、なぜ私はZfを手放さないのか。

Leica Mには、明確な弱点がある。

まず、IBISがない。手ブレ補正は、レンズにもボディにもない。低速シャッターでの撮影は、腕次第だ。

次に、AFがない。すべてマニュアルフォーカス。動く被写体を追いかけるのは難しい。

そして、高感度性能。Typ 240は2012年のセンサーだ。ISO 6400以上はノイズが目立つ。

Zfは、これらすべてを克服している。

8段分のIBIS。暗所でも手持ちで撮れる。高感度はISO 12800でも実用レベル。必要なら、AFレンズを付けることもできる。

旅行には、Zfを持っていく。環境が変化する中で、安心して撮れるのはZfだ。

Leicaは「じっくり撮る」ためのカメラ。Zfは「確実に撮る」ためのカメラ。

両方あるから、私の撮影は完結する。

EVFの利点を認める

正直に言おう。EVFにも、レンジファインダーにはない利点がある。

露出の事前確認。EVFでは、撮影前に露出結果が見える。明るすぎる、暗すぎる、といった失敗が減る。

フォーカスピーキング。ピントが合った部分が色付きで表示される。レンジファインダーの二重像より、確実にピントが分かる。

拡大表示。画面の一部を拡大して、精密なピント合わせができる。マクロ撮影では重宝する。

暗所での視認性。EVFは増感して表示できる。暗い場所でも、明るく見える。

これらは、実用的な利点だ。Leica Mには、これらの機能がない。

だが、私は「実用性」だけでカメラを選んでいない。

撮影体験という価値

カメラを選ぶとき、何を重視するか。

スペック、機能、画質。これらは重要だ。だが、私にとって最も重要なのは「撮影体験」だ。

Leica Mを使うとき、私は「写真を撮っている」と感じる。

光を読み、距離を測り、構図を決め、シャッターを切る。すべてが手動だ。カメラは何もしてくれない。だからこそ、撮影に集中できる。

Zfを使うとき、私は「写真を記録している」と感じる。

カメラが手ブレを補正し、露出を計算し、ピントを補助してくれる。便利だ。だが、どこか「任せている」感覚がある。

どちらが正しいわけではない。撮影体験の「質」が違うのだ。

私は、両方の体験を求めている。だから、2台を使い分けている。

どちらを選ぶべきか

Leica Mがおすすめな人

  • 撮影体験を最重視する人。カメラとの対話を楽しみたい人。
  • ストリートスナップが好きな人。フレーム外が見える利点は大きい。
  • Mマウントレンズを本来の形で使いたい人。設計者の意図した体験。

Nikon Zfがおすすめな人

  • オールドレンズを安心して使いたい人。IBISの恩恵は大きい。
  • 多様なシーンで撮影する人。旅行、暗所、動体。Zfは万能だ。
  • EVFの利便性を求める人。フォーカスピーキング、露出確認、拡大表示。

両方を選ぶ人

私のように、両方の体験を求める人もいる。

Leicaで撮る「濃い」体験。Zfで撮る「確実な」体験。どちらも捨てがたい。

予算が許すなら、両方持つという選択肢もある。

移行ではなく「追加」

振り返ると、私の選択は「移行」ではなく「追加」だった。

ZfからLeicaに「乗り換えた」のではない。Leicaを「追加した」のだ。

Zfは今もサブ機として活躍している。旅行には必ず持っていく。Leicaでは撮れないシーンを、Zfがカバーしてくれる。

オールドレンズの世界には、正解がない。EVFでもレンジファインダーでも、素晴らしい写真は撮れる。

大切なのは、自分が「どう撮りたいか」を知ることだ。

私は、レンジファインダーの「体験」を求めてLeicaを選んだ。だが、EVFの「利便性」も手放したくなかった。だから、2台持ちに至った。

便利じゃない理由には、だいたい意味がある。Leicaの不便さには、撮影体験という意味がある。Zfの便利さには、確実性という意味がある。

どちらを選ぶかは、あなた次第だ。

今回紹介したカメラ

物理ダイヤルとEVFの融合。オールドレンズの入門機として最適。8段分のIBIS搭載。

¥299,200 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

レンジファインダーデジタルカメラの名機。撮影体験を重視する人へ。中古市場で探すのがおすすめ。

488,800円 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

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松本 幹也

不便さを愛し、収差を「絵筆」として使う哲学者。コシナレンズとLeicaを愛するSIerインフラエンジニア。

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