Nokton Classic 40mm F1.4レビュー:40mmという中途半端さが最高な理由
40mmという焦点距離の話をしよう
レンズの焦点距離を選ぶとき、多くの人は35mmか50mmで悩む。
35mmは「広角寄りの標準」。スナップの定番だ。50mmは「標準の王道」。ポートレートにも使える万能選手。
だが私は、あえて40mmを選んだ。
Voigtländer Nokton Classic 40mm F1.4。Mマウントの単焦点レンズだ。35mmでも50mmでもない、中途半端な焦点距離。
この「中途半端さ」こそが、私にとっての最適解だった。
なぜ40mmなのか
35mmは、私には広すぎる。
スナップで構図を決めるとき、35mmだと余計なものが写り込む。背景を整理するのに神経を使う。画角が広い分、被写体との距離感も希薄になりがちだ。
50mmは、逆に窮屈だ。
街を歩きながら撮るには、少し寄りすぎる。被写体との距離を取らないと全体が入らない。結果として、撮りたい瞬間を逃すことがある。
40mmは、その中間にある。
見たままが写る。余計な演出がない。被写体との距離感がちょうどいい。
人間の視野は、両眼で約120度、注視している範囲は約40〜60度と言われる。40mmの画角は、この「注視している範囲」に近い。だから自然に見える。
開放F1.4の「滲み」という個性
Nokton Classic 40mm F1.4の開放は、シャープではない。
むしろ、独特の滲みがある。ハイライトが柔らかく広がり、コントラストも控えめ。現代のレンズとは真逆の描写だ。
これを「欠点」と見るか「味」と見るか。
私は後者だ。
この滲みは、光学設計者が意図したものだ。クラシックレンズの描写を現代に再現するため、あえて収差を残している。デジタル補正で消すような「欠点」ではない。
EVFで見る開放の滲みは、まるで水彩画のようだ。私はこの瞬間が好きだ。ピントを合わせながら、光が滲んでいく様子を眺める。撮影という行為そのものが、楽しくなる。
F4からのシャープネス
開放の滲みを楽しんだら、次はF4まで絞ってみる。
世界が変わる。
F4以降、このレンズは驚くほどシャープになる。中央部の解像力は現代レンズに匹敵する。周辺部も実用上問題ない。
つまり、このレンズは二つの顔を持っている。
開放では「クラシックレンズ」として、絞れば「現代レンズ」として使える。一本で二つの表現ができる。これは、単なる安いレンズでは得られない価値だ。
ゾーンフォーカスの使いやすさ
このレンズの距離リングには、被写界深度の指標が刻まれている。
F8まで絞れば、2メートルから無限遠までパンフォーカスになる。F5.6なら3メートルから無限遠。この指標を見ながら距離を設定すれば、ピントを「合わせる」必要がない。
ストリートスナップでは、この機能が決定的に重要だ。
カメラを構えた瞬間にシャッターを切れる。AFが迷う時間もない。被写体に気づかれる前に、撮影は終わっている。
私はLeica M Typ 240でこのレンズを使っている。レンジファインダーでピントを合わせることもできるが、日中のスナップではゾーンフォーカスで撮ることが多い。
距離感は経験で身につく。3メートル先の人物。5メートル先の風景。体が覚えてくれる。
コストパフォーマンスという現実
正直に言おう。
40mmレンズを選ぶ理由の一つに、価格がある。
Leicaの35mm Summicronは50万円以上する。50mm Summiluxも同様だ。趣味のレンズとしては、なかなか手が出ない価格帯。
Nokton Classic 40mm F1.4は、4万円台で買える。
10分の1以下だ。
もちろん、描写は違う。Leicaレンズの精緻な描写とは比較にならない。だが、4万円台でF1.4の明るさ、金属鏡筒の質感、そして「使える」描写が手に入る。
この「中途半端さ」が、私には心地いい。
35mmほど人気がないから中古も豊富。50mmほど高価ではないから気軽に持ち出せる。レンズ沼の入口として、これ以上の選択肢はないと思っている。
Leica Mマウント用。開放F1.4の明るさと、コンパクトな鏡筒。クラシックな描写が楽しめる。
¥44,091 (記事作成時の価格です)
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SCとMCの違い
Nokton Classic 40mm F1.4には、SCとMCの2種類がある。
SC(Single Coating)は単層コーティング。フレアやゴーストが出やすく、よりクラシックな描写になる。
MC(Multi Coating)は多層コーティング。逆光に強く、コントラストも高い。現代的な描写に近づく。
私はSCを選んだ。
逆光でフレアが出ると、多くの人は「失敗」と感じる。だが私は、そのフレアも含めて「このレンズの個性」だと思っている。
光学で起きたことは、光学で愛せ。
これが私の信条だ。デジタル補正で消すのではなく、その特性を理解して使いこなす。それがオールドレンズ、あるいはクラシック設計のレンズを使う醍醐味だと思う。
Leica Mとの相性
Nokton 40mm F1.4は、Leica Mマウント用に設計されている。
Leica Mのレンジファインダーには、40mmのブライトフレームがない。だが、50mmフレームの外側に35mmフレームがある。その中間あたりが40mmの画角だ。
最初は戸惑うかもしれない。だが、慣れれば問題ない。
そもそもレンジファインダーは、パララックス(視差)があるので厳密なフレーミングは難しい。40mmの「だいたいこのあたり」という感覚は、レンジファインダーの思想と合っている。
Leica M Typ 240との組み合わせで、私は2年以上このレンズを使っている。メイン機にメインレンズ。飽きることがない。
どんな人におすすめか
おすすめできる人
- 35mmと50mmで迷っている人。40mmは両方の良さを持っている。
- Mマウントレンズを安く試したい人。4万円台でこの描写は破格。
- クラシックな描写が好きな人。開放の滲みは唯一無二。
おすすめしない人
- シャープさを求める人。開放はシャープではない。F4以降は問題ないが。
- 逆光耐性を重視する人。SC版はフレアが出やすい。MC版を選ぶか、それも含めて楽しむか。
- 40mmのブライトフレームがないと不安な人。Leicaでは50mmフレームで代用する必要がある。
中途半端さを愛する
40mmという焦点距離は、確かに中途半端だ。
35mmの広さもない。50mmの標準感もない。どっちつかずの、曖昧な存在。
だが、その「中途半端さ」こそが、私には合っている。
見たままが写る。余計な演出がない。被写体との距離感がちょうどいい。
Nokton Classic 40mm F1.4は、その「中途半端さ」を体現したレンズだ。開放では滲み、絞ればシャープ。クラシックでもあり、現代的でもある。
便利じゃない理由には、だいたい意味がある。40mmという焦点距離には、35mmでも50mmでもない、独自の「意味」がある。
そして私は、その意味を噛み締めながら、今日も街を歩いている。
今回紹介したレンズ
Leica Mマウント用。開放F1.4の明るさと、コンパクトな鏡筒。クラシックな描写が楽しめる。
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