NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは本当に完璧か|1年使用して見えた実力と限界

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sは本当に完璧か|1年使用して見えた実力と限界

f/1.2ではなくf/1.8を選んだ理由

NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sは、Nikonの技術力を結集した究極の標準レンズだ。

だが私は、あえてf/1.8 Sを選んだ。

理由は明確だ。f/1.2 Sは開放で使うと、わずかながら収差が残る。MTFチャートを見れば分かる。周辺部のコントラストが、f/1.8 Sより劣る。

「開放F1.2の表現力」と「開放から完璧な描写」。私は後者を選んだ。

2025年2月に購入してから1年。このレンズを使い続けて見えてきた実力と限界を報告する。

解像度:開放から妥協なし

f/1.8 Sの最大の美点は、開放から使える解像度だ。

絞り開放でも、画面中央から周辺まで均一に解像する。等倍で確認しても、像の甘さを感じない。これは高画素機であるZ7 IIとの組み合わせで、特に顕著に実感できる。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sで撮影したスウェーデン・ヴァクスホルムの風景
Nikon Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sで撮影。周辺まで均一な解像度を実現 Photo by Bengt Nyman / CC BY 2.0

f/2.8まで絞れば、画面全域で完璧に近い描写が得られる。風景撮影で細部まで解像させたいとき、この安心感は大きい。

ただし、被写体との距離が近いと、被写界深度の影響でピント面以外がボケる。これは物理現象であり、レンズの欠点ではない。

収差補正:光学的に正しい描写

このレンズを選んだ最大の理由が、収差補正の完璧さだ。

  • 球面収差:開放でも点光源が点として写る
  • コマ収差:夜景の点光源が変形しない
  • 色収差:高コントラストな境界でも色にじみがない
  • 歪曲:ほぼゼロ、直線が直線として写る

特に夜景撮影で、この収差補正の恩恵を感じる。街灯や車のヘッドライトが、鳥の羽のように変形せず、きれいな点光源として写る。

「味がある」という理由でオールドレンズを使う人もいる。だが私は、収差を「味」とは呼ばない。それは光学的欠陥だ。現代のレンズは、その欠陥を克服している。

ボケ味:9枚羽根の円形絞り

f/1.8という明るさは、ボケを活かした撮影に十分だ。

9枚の円形絞りにより、絞っても点光源のボケが円形を保つ。f/2.8程度まで絞っても、角張らない。

ボケの質は滑らかで、二線ボケも目立たない。ただし、f/1.2 Sと比較すると、ボケ量は当然少ない。大きなボケを求めるなら、f/1.2 Sを選ぶべきだ。

私がf/1.8 Sを選んだのは、ボケ量より解像度を優先したからだ。ボケに頼らず、被写体そのものの質感で勝負したい。

AF性能:静かで正確

ステッピングモーター駆動のAFは、静粛で高速だ。

動画撮影でもAF駆動音が録音されない。これは動画も撮る人には重要なポイントだ。

Z7 IIとの組み合わせでは、瞳AFが正確に機能する。人物撮影で、ピントを外すストレスから解放された。

ただし、暗所でのAF精度は完璧ではない。-4EVまでAFが効くとされているが、実際には-2EV程度から迷いが出始める。暗所では、MFに切り替えることもある。

ビルドクオリティ:S-Lineの信頼性

金属マウント、防塵防滴構造、フッ素コーティング。S-Lineレンズとしての品質は文句なしだ。

重量は約415g。f/1.2 Sの約1kg弱と比較すると、携帯性で大きなアドバンテージがある。Z7 IIとの組み合わせでも、バランスが良い。

1年間、雨の日も雪の日も持ち出したが、動作に問題はない。マウント部のガタつきもなく、長期使用に耐える堅牢性を感じる。

このレンズの限界

完璧なレンズなど存在しない。f/1.8 Sにも限界がある。

ボケ量の限界 f/1.8では、背景を完全に溶かすことは難しい。被写体と背景の分離を重視するなら、f/1.2 Sか85mmを検討すべきだ。

最短撮影距離 最短40cmは、テーブルフォトには少し長い。料理や小物を大きく写したいなら、マクロレンズが必要だ。

フィルター径 62mmという中途半端なサイズ。他のS-Lineレンズと共用できないのが惜しい。

NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの評価まとめ

項目評価コメント
解像度★★★★★開放から完璧
収差補正★★★★★光学的に正しい
ボケ味★★★★☆滑らかだが量は控えめ
AF性能★★★★☆静粛で高速、暗所でやや弱い
ビルドクオリティ★★★★★S-Lineの信頼性
コストパフォーマンス★★★★★f/1.2 Sの1/3以下の価格

f/1.2 Sは約27万円、f/1.8 Sは約8万円。価格差は約19万円だ。

その差額で、別のレンズを買える。NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sを追加すれば、撮影の幅が大きく広がる。

中途半端な機材を複数持つより、完璧な一台を使い倒す。f/1.8 Sは、その信条に応えてくれる「完璧に近い」標準レンズだ。

開放から妥協のない解像度と収差補正。S-Lineの標準レンズ。

¥82,923 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

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中村 徹

物理的正しさこそ美。収差を許さない完璧主義者、S-Lineの守護者。

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