ストリートスナップに最適なカメラとは?Leicaユーザーが語る条件

ストリートスナップに最適なカメラとは?Leicaユーザーが語る条件

ストリートスナップに必要なものは何か

ストリートスナップに最適なカメラは何か。この問いに対する答えは、撮影者の数だけある。

GR IIIが最高だと言う人がいる。起動の速さ、片手で操作できるサイズ、28mmの画角。すべてが合理的で、確かに正しい。

だが私は、あえてLeica M Typ 240を選ぶ。マニュアルフォーカス、レンジファインダー、フィルム時代から変わらない操作体系。すべてが非効率だ。

それでも私がLeicaを選ぶ理由を、今日は語りたい。

レンジファインダーでしか見えない世界

一眼レフやミラーレスのファインダーは、レンズを通した像を見せる。撮れる範囲だけが見える。

レンジファインダーは違う。ファインダーの中には、フレームの外側も見える。被写体がフレームに入ってくる瞬間を、予測できる。

ストリートスナップにおいて、この「予測」は決定的に重要だ。

人が歩いてくる。自転車が通り過ぎる。光が差し込む。すべてが動いている街の中で、「この瞬間」を待ち構えることができる。

Leica M Typ 240で撮影したパリの路地
Leica M Typ 240で撮影。レンジファインダーならではの「待ち」の構図 CC BY 2.0

マニュアルフォーカスの意味

AFは確かに速い。瞳認識も優秀だ。だが、ストリートスナップにおいてAFは本当に必要か。

私は違うと思っている。

ストリートスナップでは、多くの場合、被写体との距離はある程度予測できる。3メートル先の人物。5メートル先の風景。距離感は経験で身につく。

私はNokton 40mm F1.4を使っている。このレンズの距離リングには、ゾーンフォーカスの指標がある。F8まで絞れば、2メートルから無限遠までピントが合う。

つまり、ピントを「合わせる」必要がない。

カメラを構えた瞬間にシャッターを切れる。AFが迷う時間もない。被写体に気づかれる前に、撮影は終わっている。

40mmという画角の意味

ストリートスナップといえば35mmか28mm。それが定説だ。

だが私は40mmを選ぶ。

35mmは広すぎる。余計なものが写り込む。28mmはさらに広く、被写体との距離感が希薄になる。

40mmは、人間の視野に近い。見たままが写る。余計な演出がない。

そして何より、40mmレンズは安い。Nokton 40mm F1.4は4万円台で買える。50mmほど高価ではなく、35mmほど人気がないから中古も豊富だ。この「中途半端さ」が、私には心地いい。

Voigtländer Nokton Classic 40mm F1.4で撮影した作例
Nokton 40mm F1.4の開放で撮影。40mmの画角は見たままの距離感を残す Photo by Lucertola / CC BY-SA 3.0

シャッター音という存在感

現代のミラーレスカメラは、ほぼ無音でシャッターを切れる。電子シャッターなら完全に無音だ。

Leica Mのシャッター音は、決して小さくない。布幕シャッターの「シュッ」という音。静かな場所では確実に聞こえる。

だが私は、この音を消したいとは思わない。

シャッター音は、撮影者の存在を示す。「私はあなたを撮りました」という宣言だ。盗撮ではなく、対話としての撮影。

もちろん、被写体に気づかれたくない場面もある。だがストリートスナップは、街との対話だ。音を消して、存在を消して、何を撮るのか。

不便さが生む集中

Leica Mには、オートモードがない。露出補正ダイヤルもない。ISOダイヤルを回し、シャッタースピードダイヤルを回し、絞りリングを回す。

すべてが手動だ。

この不便さが、撮影への集中を生む。

オートモードのカメラは、撮影者を「構図を決める係」にしてしまう。露出もピントもカメラ任せ。考えることが減る分、撮影への没入も浅くなる。

Leica Mでは、すべてを自分で決める。光を読み、距離を測り、絞りを選ぶ。その過程で、街をより深く観察することになる。

結果として、撮れる写真の質が変わる。

おすすめの組み合わせ

ストリートスナップを始めるなら、以下の組み合わせをおすすめする。

レンズ:Voigtländer Nokton Classic 40mm F1.4

Mマウントの40mmでは最もコストパフォーマンスが高い。開放では独特の滲みがあり、F4以降はシャープ。ゾーンフォーカスの指標も見やすい。

Leica Mマウント用。開放F1.4の明るさと、コンパクトな鏡筒。ストリートスナップに最適。

¥44,091 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

ボディ:Leica M Typ 240(中古)

現行のM11は高価だが、Typ 240なら中古で30万円台から見つかる。2400万画素のCMOSセンサーは、今でも十分な画質だ。

新品は入手困難だが、中古市場には良品が流通している。MapCameraやフジヤカメラで探すのがおすすめだ。

レンジファインダーデジタルカメラの名機。撮影体験を重視する人へ。中古市場で探すのがおすすめ。

¥488,800 (記事作成時の価格です)

rakuten.co.jp

GR IIIとの違い

同じストリートスナップでも、GR IIIとLeica Mでは撮れる写真が違う。

GR IIIは「瞬発力」のカメラだ。起動0.8秒、片手で操作、28mmの広い画角。見た瞬間に撮れる。

Leica Mは「待ち」のカメラだ。構図を決め、露出を合わせ、被写体を待つ。撮影の過程そのものが、作品の一部になる。

どちらが優れているかではない。どちらの撮影体験を求めるか、だ。

どんな人にLeicaをおすすめするか

おすすめできる人

  • 撮影の過程を楽しみたい人。オートモードでは得られない没入感がある。
  • フィルムカメラの経験がある人。操作体系が似ているので、すぐに馴染める。
  • 40mmか50mmの画角が好きな人。Leicaの真価は標準域で発揮される。

おすすめしない人

  • 動く被写体を追いたい人。AFがないので、子供やペットには不向き。
  • 失敗したくない人。マニュアル操作なので、露出ミスは自己責任。
  • 軽さを求める人。Mボディ+レンズで700g以上になる。

便利じゃない理由には、だいたい意味がある。Leica Mのストリートスナップは、その「意味」を噛み締めながら撮る、贅沢な時間だ。

今回紹介した機材

Leica Mマウント用。開放F1.4の明るさと、コンパクトな鏡筒。ストリートスナップに最適。

rakuten.co.jp

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松本 幹也

不便さを愛し、収差を「絵筆」として使う哲学者。コシナレンズとLeicaを愛するSIerインフラエンジニア。

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