夜景をキレイに撮るカメラの条件|Z7 IIで検証した5つの要素

夜景をキレイに撮るカメラの条件|Z7 IIで検証した5つの要素

夜景撮影で「キレイ」を定義する

夜景をキレイに撮りたい。多くの人がそう思うが、「キレイ」の定義があいまいなまま機材選びを始めてしまう。

私は品質管理の仕事をしている。製品の良し悪しを判断するとき、必ず数値化できる基準を設ける。カメラ選びも同じだ。「なんとなく良い」では、後で必ず後悔する。

夜景撮影における「キレイ」を分解すると、以下の要素になる。

  1. ノイズの少なさ:暗部が滑らかであること
  2. 解像感:細部まで描写されていること
  3. ダイナミックレンジ:明暗差を破綻なく表現できること
  4. 色再現性:光源の色が正確であること
  5. シャープネス:像が甘くならないこと

この5つを満たすカメラの条件を、Nikon Z7 IIで実際に検証しながら解説する。

条件1:高感度性能は「常用ISO」で判断する

カタログスペックの拡張ISOは参考にならない。重要なのは、等倍で見てもノイズが許容範囲に収まる「常用ISO」の上限だ。

Z7 IIの場合、ISO 64〜25600が常用範囲とされている。しかし実際に等倍で確認すると、ISO 6400を超えたあたりから暗部にカラーノイズが目立ち始める。

私の基準では、ISO 3200までが実用域だ。

ここで重要なのは、画素数とのトレードオフを理解することだ。Z7 IIは4575万画素。同じセンサーサイズで2400万画素のZ6 IIIと比較すると、1画素あたりの受光面積は約半分になる。

つまり、高画素機は本質的に高感度に弱い。これは物理法則であり、回避できない。

機種画素数実用高感度上限(筆者基準)
Z7 II4575万ISO 3200
Z6 III2450万ISO 12800
Z84571万ISO 6400

では高画素機は夜景に向かないのか?そうではない。三脚を使えばISO 64で撮影できるからだ。

条件2:ダイナミックレンジは14bit RAWで確保する

夜景は明暗差が激しい。街灯の光源は白飛びしやすく、影になる部分は黒潰れしやすい。

Z7 IIのセンサーは、14bit RAWで約14.7EVのダイナミックレンジを持つ。これは現行のフルサイズ機としてはトップクラスの数値だ。

ただし、この性能を引き出すには条件がある。

  • 14bit RAWで撮影すること(12bitでは階調が足りない)
  • 低ISOで撮影すること(高感度ではダイナミックレンジが狭まる)
  • RAW現像時に適切に持ち上げること(撮って出しでは活かせない)

私はNX Studioで現像している。暗部を+2EV程度持ち上げても、Z7 IIのRAWは破綻しない。この余裕が、夜景撮影では決定的に重要だ。

Nikon Z7で撮影した台北の夜景
Nikon Z7で撮影。台北101を含む夜景。明るいビルの光源から暗部まで、広いダイナミックレンジで破綻なく描写 Photo by HC Lin / CC BY 2.0

条件3:解像度は「等倍で見る意味があるか」で判断する

4575万画素の解像度を活かすには、レンズも相応の性能が必要だ。

私はNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sを常用している。このレンズはMTFチャートで周辺部まで高いコントラストを維持しており、Z7 IIの解像度に負けない。f/2.8まで絞れば、画面全域で完璧に近い描写が得られる。

夜景撮影では、以下の条件でレンズを選ぶべきだ。

  • 開放から使える収差補正:夜景では点光源が多く、収差が目立ちやすい
  • 周辺まで均一な解像度:建物の直線が流れないこと
  • コマ収差の少なさ:点光源が鳥の羽のように変形しないこと

「味がある」という理由でオールドレンズを使う人もいるが、私はそれを光学的欠陥と捉えている。夜景で「滲み」が出るのは、単にレンズの性能が足りていないだけだ。

条件4:手ブレ補正より三脚を選ぶ理由

Z7 IIにはボディ内手ブレ補正(VR)が搭載されている。5軸補正で、公称5.0段分の効果がある。

しかし、夜景撮影で手持ちは推奨しない。理由は3つある。

  1. ノイズの問題:手持ちで撮れるシャッター速度を確保するには、ISOを上げる必要がある
  2. 解像度の問題:微細なブレは等倍で確認すると必ず見える
  3. 構図の問題:三脚があれば、何度でも同じ構図で撮り直せる

私は3kg以上の三脚を使っている。軽量三脚は風でブレる。夜景撮影は長時間露光が基本であり、その間ずっと安定している必要がある。

三脚を使えば、ISO 64、f/8、30秒といった設定が可能になる。これがZ7 IIの性能を最大限に引き出す撮影方法だ。

条件5:EVFの見やすさは実用上の必須条件

暗い場所でファインダーを覗いたとき、何も見えなければ構図が決められない。

Z7 IIのEVF(電子ビューファインダー)は、369万ドット、0.8倍の倍率を持つ。暗所でも増感されて表示されるため、肉眼では見えない暗部も確認できる。

これは光学ファインダー(OVF)にはない利点だ。一眼レフで夜景を撮っていた時代は、ライブビューを使わないと構図が確認できなかった。

EVFのデメリットとして「実際の明るさと異なる」という点があるが、夜景撮影ではむしろメリットになる。ヒストグラムと組み合わせれば、露出の過不足を撮影前に確認できる。

Z7 IIの夜景撮影における評価

ここまでの条件を踏まえて、Z7 IIを評価する。

条件Z7 IIの評価コメント
高感度性能★★★☆☆高画素機の宿命。三脚前提なら問題なし
ダイナミックレンジ★★★★★クラストップ。RAW現像で真価を発揮
解像度★★★★★4575万画素は夜景の細部を克明に描写
手ブレ補正★★★★☆優秀だが三脚を使うので出番は少ない
EVF★★★★☆暗所でも見やすい。ピーキング機能も有効

総合すると、三脚を使う前提であれば、夜景撮影に最適なカメラだと言える。

手持ちで気軽に夜景を撮りたいなら、Z6 IIIのような低画素・高感度機を選ぶべきだ。しかし、三脚を据えて「完璧な一枚」を追求するなら、Z7 IIの解像度とダイナミックレンジは他に代えがたい。

夜景撮影におすすめのカメラの条件まとめ

最後に、夜景撮影に必要なカメラの条件を整理する。

必須条件

  • フルサイズセンサー(ダイナミックレンジと高感度のため)
  • 14bit RAW対応
  • EVF搭載(暗所での構図確認のため)

推奨条件

  • 3000万画素以上(トリミング耐性と細部描写のため)
  • ボディ内手ブレ補正(手持ちスナップも想定するなら)
  • デュアルカードスロット(長時間撮影でのバックアップ)

あると便利

  • インターバルタイマー内蔵
  • USB給電対応(タイムラプス撮影時)
  • 防塵防滴(屋外での長時間撮影に備えて)

中途半端な機材を複数持つより、完璧な一台を使い倒す。それが私の信条だ。

4575万画素フルサイズミラーレス。14.7EVのダイナミックレンジと高解像度で夜景撮影に最適。

¥357,500 (記事作成時の価格です)

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夜景撮影は、カメラの性能が如実に出るジャンルだ。だからこそ、妥協のない機材選びをしてほしい。

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物理的正しさこそ美。収差を許さない完璧主義者、S-Lineの守護者。

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